レグルス それは、
理想を叶えるイメージ。

東京に住むなら一生賃貸?それとも分譲?
元不動産営業が忖度なしで「シミュレーション」してみました

悩んでいる家族の写真

最近、知人が引越しを検討しているようで、二人で家の話をよくします。場所はあの辺が良くて広さはこのくらいがよくて、でも家賃はここまでかなあ……当たり前ですけど、考えたらきりがないくらい希望は出てきますよね。 でも、ちょっと考えてみてください。もう一歩踏み込んで、「本当に賃貸で良いの?」「もしかしたら買ったほうが将来的に良いかも?」という悩みも出てきませんか? ということで、今回は元不動産営業が、一生賃貸と分譲購入のどちらが得なのか、営業を離れた今だからこそ忖度(そんたく)なしで、本気でシミュレーションしてみました!

賃貸と分譲、あなたならどちらを選びますか?

case.1 一生賃貸で過ごす場合

年齢や家族構成によって差異が生じやすいので、今回は「Aさん。35歳。東京都品川区の1LDKに居住している独身の方」の場合で比較させていただきます。例えば、リクルートが提供している住宅情報サイト「SUUMO」によると、品川区における1LDKの家賃相場は13.1万円とのこと。この金額をベースにして考えていきます。賃貸は「引越しが気軽に出来る」というメリットがあるので、そのことを鑑みて、「10年ごとに引越し、65歳からは引越しをしないで住み続けた」場合を見ていきましょう。

参考資料:東京都の家賃相場(「SUUMO」)

 

賃貸の場合、その多くが2年ごとに契約更新して、更新料(家賃の1か月分)がかかることが多いですよね。つまり、4回更新をして10年後に引越しをしたと仮定すると、【13.1万円(家賃)×120カ月(10年)+13.1万円×4(更新4回分)=16,244,000円①】となり、10年間で16,244,000円を居住費として支払ったという計算になります。その後、45歳になったAさんは品川を離れ、今までより築年数は古いけれど広く、家賃が12万円に下がる23区外の賃貸に引越し、そこで10年暮らします。【12万円(家賃)×120ヵ月(10年)+12万円×4(更新4回分)=14,488,000円②】になりますね。

そして、55歳になったAさんは、セキュリティもなく設備も最低限しかない代わりに、家賃が7万円とさらに安価な賃貸へ引越します。【7万円(家賃)×120ヵ月(10年)+7万円×4(更新4回分)=8.680,000円③

さて、賃貸で暮らして30年経過したこの時点で、Aさんにかかった居住費は【①+②+③=39,412,000円】。実際は、このほかに引越し代や敷金礼金、仲介料等の諸経費が掛かるため、賃貸で30年暮らした場合、Aさんのようにそれほど贅沢な住居でなかったとしても、4,000万円以上はかかってしまいます。

その後、65歳になったAさんは、老後のことや保証会社との兼合いがあり、5万円の賃貸に引越し、日本人の平均寿命である84,36歳(便宜上85歳)まで生活しました。【5万円(家賃)×240(ヵ月)+5万円×9(更新9回分)=1,245万円】結果として、Aさんの居住費の合計は約5,245万円かかりました。

 

case2.分譲住宅を購入した場合

分譲住宅は、その物件の建つエリアによって、値段が大きく異なります。たとえば、上記のAさんが1番最初に住んだ品川区であれば、1LDKの物件平均価格は5,094万円となり、表面的な金額だけでみるとお得に見えます。しかし、不動産所有者は毎年「固定資産税と都市計画税」の支払い義務があるのです。

加えて、建物の経年劣化と共に金額も下がっていきますが、私が過去に品川区の物件を販売したとき、固定資産税は年約13万円でした。ということは、当初10年13万円、11年目以降10万円として計算すると50年間で530万円の税金がかかってくることになります。

つまり、品川区の1LDK分譲住宅に50年間住んだこのケースの場合、5,624万円かかったということになり、賃貸のほうが379万円お得、という結果になりました。

本当にお得なのはどっち?

結論として、住宅に対して、ただ家賃が安いことのみを求めるのであれば、上記の通り一生賃貸で暮らすほうがお得だと思います。さらに言えば、住宅への関心が薄ければ薄いほど、13万円や12万円もの家賃がかかる住宅を選択しない可能性が高いと思います。そして、初めから家賃3万円や5万円などの住宅を選択すれば、より住宅コストを抑えられます。

しかし、住宅に対して安さのみを追求される方は比較的、少ないと思います。

私自身も住まいに対してエリアや広さのこだわりを持って選択してきましたし、この記事を書こうと思ったきっかけをくれた引越しを検討している友人も、私以上に多くを住宅に対してこだわりを持っている印象でした。

「SUUMO」や「HOME’S」などの住宅検索サイトを見ても、駅からの距離や広さ・間取り、2階以上等、多くの条件で検索ができるようになっているのも、住まいに対して何かしらの快適性を求める方が圧倒的に多いからだと思います。また、「ウチノカチ」の調べによると、品川区の中古相場が築20年、専有面積12.5坪(約41㎡)で、約4,312万円で売却することができます。

安心できる住宅で暮らすためには

5,000万円を金利0.389%、35年ローンで借りた場合、月々の支払いは12.7万円ですから、住宅ローンの残債は2,000万円ちょっとだと思います。ローンを完済しても約2,300万円が手元に残ると思いますので、次の住宅を購入するための頭金にすることもできますし、実家に戻るにしても、貯金が多いほうが嬉しいですよね。

そして、最新の設備と安心のセキュリティ、賃貸に比べて騒音問題や近隣トラブルが起こりにくいと言われている分譲住宅で生活できた20年間は、とても充実した生活になったことでしょう。例え20年目で売却をせず、30年、40年その住宅で過ごしたとしても、住宅の価値が0になることは基本的にはありません。築40年のマンション、築50年のリノベーション一軒家、多くの中古物件が何千万円という価値を持っていて、市場に出回っています。

賃貸派の方々は「移動がしやすい」「借金を背負うリスクがある」などの意見があると思いますが、上記の通り、移動は分譲であっても困らず、むしろお釣りが来るくらいです。気になる借金、ローンに関しては、ここ数年住宅ローンの金利は非常に低いですし、中にはがん特約や八大疾病特約の付いた商品があります。どちらかと言うと、個人的には、借金を背負うリスクより、「年齢制限がある住宅ローンを背負う選択をしないリスク」のほうが重いと感じます。

「資産運用」とまでは言わないですが、「いつか現金化できるものを持つ」ことは、経済的な安心感につながり、安心できる住宅で暮らせることは、心理的安心や、身体的安心にもなるので、QOLの高い生活を送ることができると思っています。

 

今月の人気記事